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オリーブオイル100%「キャスティール石鹸」

 一般に油と呼ばれるものには、脂肪酸とグリセリンが含まれています。この脂肪酸に苛性ソーダ(NaOH)を反応させると固形石鹸になります。グリセリンは保湿成分として有効な成分ですが、市販されている石鹸では全く取り除かれていたり、一部が取り除かれ、別途販売されています。このグリセリンは保湿成分であるとともに、ダイナマイトの製造に必要なニトログリセリンの原料でもあり、戦時中はダイナマイトを製造するために石鹸が作られていたという話もあるようです。

 また石鹸作りでは、脂肪酸を苛性ソーダ(NaOH)と反応させて脂肪酸ナトリウムを生成しますが、脂肪酸を水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と反応させると、脂肪酸カルシウムを生成します。これを牛などに与えると、
  1.牛乳のカルシウム成分が高くなる
  2.牛乳の乳脂肪分が高くなる
ということなんです。まぁ昔は石けんも薬用として摂取していたものもあるようですので、牛のエサになっていてもおかしくはないわけです。でも昨今の狂牛病にみられる、飼料への牛骨粉の配合などを鑑みても、こういった業界ではエサへの化学化合物の配合ってジョーシキなのかもしれませんね。(知らない消費者が非常識??)

 ※ここで作るオリーブオイル石けんは、泡立ちは通常の石けんよりも少な目に仕上がります。泡立ちと洗浄力とはかならずしも一致しません。泡立ちは控えめですが、この石けんの洗浄力が少ないわけではありません。

石鹸作りの基本的な材料

苛性ソーダ(水酸化ナトリウムNaOH) 57g オリーブオイル 500g
精製水 175g オプションとしてココア 小さじ1/4

用意しておきたい器具

ステンレス製の鍋 計量計り 耐熱性のある空き瓶 ボール
ステンレス製または耐熱プラスチック製スプーン 温度計 古新聞紙 ゴム手袋
石鹸型用容器(牛乳パック×2や、タッパーなど) 泡立て器 苛性ソーダ計量用の紙もしくは瓶  

Let’s start!

作り方  
【器具の準備】

 劇薬の苛性ソーダを扱うため、作業場所および作業場所の床には、新聞紙を引き詰め、作業終了後には、周囲に飛び散った薬品を簡単に廃棄できるようにしておきます。また、手際よく作業するために、利用する器具に不足がないことを確認しておきます。空気中に漂った苛性ソーダを吸気しないように、作業前には換気扇を「強」で動作させておきます。

【苛性ソーダの計量】

 苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を正確に計量します。上記のレシピ以外の材料で石けんを作る場合は、油の種類によって苛性ソーダの分量が変わるので、油の鹸化価を調べ、苛性ソーダの分量を計算する必要があります

【水溶液を作る】

 精製水を耐熱性のある瓶にいれて正確に計量したところに、苛性ソーダを入れてスプーン等で溶かし残しがでないように混合します。苛性ソーダを入れると水の温度が急激に上昇し、80度以上になります。やけどに注意しながら、冷水を張ったボールに、瓶全体を浸して40度まで冷まします。

【油との混合】

 油を正確に計量し、弱火で苛性ソーダ水溶液と同じ40度まで加熱します。苛性ソーダ水溶液と油が同じ温度にそろったら、苛性ソーダ水溶液を油にゆっくりとそそぎ入れます。

【攪拌する】

 泡立て器を使って20分間、ずっとかき混ぜ続けます。苛性ソーダと油が化学反応を起こして、「鹸化」が進行します。

【一休み】

 油を混ぜていた泡立て器で、「の」の字を描いたときに、表面にうっすらと跡形が残ることを「トレース」といいます。攪拌作業は、このトレースがでるまで行う必要があります。とは言っても、オリーブオイルを使用した場合には、トレースがでるまで12時間〜24時間前後かかるため、最初の20分以降は休み休み行います

【トレースを確認する】

 油が苛性ソーダと半分くらい反応すると、写真のように「の」の字を描いたときに、跡形(トレースといいます)が残るようになってきます。オリーブオイルの場合は、24時間もかかりますが、早いものでは攪拌後1時間弱で出るものもあるようです。この状態になったら次の工程に進みます。トレースがでないものは、引き続き攪拌を続けます。

【型入れ】

 石鹸の形にしたい型に溶液を流し入れます。型としては、タッパーや牛乳の紙パックなどが良いようです。写真は、ちょっと模様を付けようとして、小さじ1/4のココアを1/8量程度の溶液に混合し、色づけしていない原色の溶液の上に流し入れ、「箸」でちょこっと混ぜてみたものです。

【熟成】

 型に入れた石鹸を保温できるようにタオルなどにくるみ、24時間熟成させます。発泡スチロールの箱やクーラーボックスがあれば、その中に入れておくと良いです。

10 【乾燥】

 24時間熟成の終わった石鹸を容器から取り出し、使いやすい大きさに切り分けてから、4〜6週間ほど風通しのよい日陰で乾燥させます。この間にも鹸化は進行し、苛性ソーダのアルカリ成分は低下していくため、気が急いてもきっちりと待つようにします。

     

ここでの「こつ」

※1 【オリーブオイル
 オリーブオイルを材料に使用した石鹸は、泡立ちは静かですが、なめらかで、洗浄後はしっとり感があります。しかし、オリーブオイル自体が高価すぎるといった点や、トレースにかかる時間が長いといった欠点もあります。また料理にはエキストラバージンオイルが最上級という位置づけになるようですが、エキストラバージンオイルは香りが強いため、安価でトレース時間の短い「ピュア」や、「ポマス」の方が向いています。
 油の分量は、500gを最低分量としているレシピが少なくありません。これは油の分量が少なくなると、
  ・反応熱が減少するために均一な石けんを作りにくいことや、
  ・計量誤差からくる苛性ソーダの分量が過剰になってしまうこと
等を懸念しているようです。500gよりも多い目に作る段には、単純に分量を比例計算すれば良いのですが、500gよりも少なく作ることは避けた方が無難でしょう。

※2 【苛性ソーダ(水酸化ナトリウムNaOH)
 薬局で購入することができます。購入時には、印鑑が必要で住所、氏名、利用目的(石鹸作り用と応えればO.K.)を記入します。450gで350円程度です。苛性ソーダは劇薬のため、取り扱いには十分注意しましょう。
取り扱い時には、肌の露出はさけ、手にはゴム手袋、目にはゴーグルの着用をお勧めします。苛性ソーダを水に溶かすと急激に温度が上昇しますし、溶液に触れると皮膚がただれ、目は失明する恐れもあるので、注意しましょう。また苛性ソーダは空気中の水分を吸収して溶ける性質(潮解性)があるので、計量するときには手短に済ませるようにします。

※3 【精製水
 ミネラルをたくさん含む水(おいしい水など)を使うと、苛性ソーダがそれらのミネラルと反応してしまいます。水には精製水を使うか、軟水を使うようにします。水の分量が少ないとトレースまでの時間を短くすることができますが、溶媒としての役割もあるので30%〜40%の範囲で使うようにします。当レシピでは35%の分量になっています。料理のように体積で計量するよりも、重さで正確に計量するほうが良いため、分量としてはg表示を用いています。ということで、水は計量カップではなく、計量量りで計量するようにしましょう。
 なお、石けん作りの作業の中で、「水」の果たす役割とは、
  ・苛性ソーダを溶かす溶媒である
この1点に尽きます。油によって鹸化価が異なり、その鹸化価によって苛性ソーダの分量が変わるわけですから、本来水の分量は油を元に算出するのではなく、苛性ソーダの分量を元に算出すべきなのかもしれません。しかしそのようなレシピにはお目にかかったことはありません…。

※4 【泡立て器
 電動泡立て器は使用せず、手でやることをお勧めします。未反応状態の苛性ソーダが飛び散ったり、石鹸が急激に固まり空気が混入してしまったりする恐れがあります。

※5 【鹸化価
 油1gが鹸化するときに必要な苛性ソーダ量をmgで表したものをいいます。油は種類によって鹸化価が変わり、代表的な油では次の表のようになります。ただし必ずしも全ての製品がこの数値にぴったりあてはまるわけではなく、同じ種類の油でも製品によるばらつきがみられます。製品ごとのばらつきによって、未反応のまま残る苛性ソーダがでないようにするためにも、下表の鹸化価をひとつの指標として苛性ソーダの分量を
ディスカウントし、安全に石けんを作ることをお勧めします。鹸化価の一例を下表に示します。鹸化価の詳細はこちら

オイル名(和文) 英文表記 鹸化価(NaOH) 油100gあたりの苛性ソーダ量
(実際にはディスカウント※6します)
特  徴
オリーブ油 olive 134 13.4g 保湿効果は大きいが、トレースに時間がかかる
パーム油 palm 141 14.1g とても固くなる
ココナツ油 coconut 190 19.0g とても固くなり、泡立ちが良く、洗浄力がある
キャノーラ油 canola 124 12.4g 保湿効果があり、安価
牛脂 tallow 140.5 14.1g とても固くなり、安価だがわずかに脂肪臭あり
ラード(豚油) lard 138 13.8g 固くなり、安価で、洗浄力がある
米ぬか油 rice bran 128 12.8g 保湿効果があり、ビタミンやミネラルを含み、トレースが早い
コーン油 corn 136 13.6g 安価
大豆油 soybean 135 13.5g 固くなり、安価
ひまわり油 sunflower 134 13.4g 保湿効果があり、安価(oliveの代用可)
紅花油 safflower 136 13.6g 保湿効果があり、安価(oliveの代用可)
※鹸化価は、参考文献 Tao's handmade soap のRainbow Meadow Catalogue, The Handmade SoapBook(Melinda Coss), Essentially Soap (Robert McDaniel)を参考にして、mg表示に変換しました

※6 【ディスカウント
 石鹸を作るときに鹸化価から算出された必要苛性ソーダ分量に対して、
苛性ソーダを15%〜5%少なく配合することをいいます。苛性ソーダの分量を減らすわけですから、石鹸には苛性ソーダと反応せずに残る油が含まれることになり、その成分が石鹸を使用したときのマイルドな保湿感につながります。また石鹸成分中に、未反応状態で残存する苛性ソーダの危険性を低減するという重要な役割もあります。
 当レシピでは、500gのオリーブオイル(鹸化価:134)を使用して、ディスカウント15%(つまり0.85倍)としており、
    500g×0.134×0.85 = 57g  となり、苛性ソーダを57g としているわけです。

※7 【最初の20分以降は休み休み行います
 
始めは30分休んで5分混ぜ、1時間休んで5分混ぜ、3時間休んで5分混ぜるといった具合に混ぜる間隔を伸ばしながら、作業をするといいでしょう。あまり間隔をあけすぎると分離してしまう恐れがあるので、気がつけば混ぜるようにしましょう。オリーブオイル100%のキャスティール石けん以外では、トレースにここまで時間がかかりません。

※8 【石鹸を容器から取り出し】
 石けんがやわらかくて型からだすのが難しいようであれば、冷凍庫で1時間程度冷やしてみます。常温に取り出して10分くらいおくと、せっけんが結露して滑りがよくなって取り出しやすくなります。

※9 【リンスの代替品
 手作り石けんは、アルカリ性です。アルカリ性では髪のキューティクルはゆるみ、洗髪したときにギシギシした感じが残る場合があります。このような場合には、酢やクエン酸を水で溶いて薄めた液で、洗髪後に石けん成分を中和するといいようです。
  ・酢を使う場合は、洗面器1杯の湯に盃1杯ほどの酢を溶き、リンスと同じように髪にしみ込ませます。
  ・クエン酸を使う場合は、クエン酸50gを400ccの水に溶かし、酢と同じように使います。
 酢のにおいが鼻につくという方でも、クエン酸なら無臭なので抵抗がないかもしれません。またクエン酸を溶かす前に、ハーブなどを煮出して冷ましておけば、いろいろな香り付けをして楽しむことができます。クエン酸は薬局で
  ・500gで1000円程度
  ・ 50gで450円程度
  ・ 25gで350円程度
で購入できます。チーズ作りでできる副産物の乳清もこれらと同じようにリンス代わりにできるようです。
 私は洗髪時のシャンプーを石けんに切り替えて既に20年になりますが、石けんを使い初めた1ヶ月目こそ髪もギシギシになりましたが、3ヶ月もすると逆にさらさらになりましたし、半年もすると「天然パチキ(俗に言う、おでこのそり込み部分の後退…、ハゲの始まりですね)」の部分に産毛のような毛が生え始め、天使の輪もできるようになりました。男性の場合は、天使の輪が嬉しいわけではないですが、おでこの後退が止まったのは非常に嬉しかったです。全ての方に同じような効果がでるとは思いませんが、期待してもいいかもしれません。

※10 【使用感】
 夏の日焼けで真っ赤に火照った身体を、市販(米国製)の石けんで洗ったところ、針で突くような刺激がありました。翌日にまだ真っ赤に火照ったままの身体を、普段は顔や頭用にしか使っていないこの手作り石けんで洗ったところ、なんの異常もなく、痛みもなく、洗うことができました。肌にいいと改めて感じた一瞬でした。これは、そり込みの侵攻を止める効果がありそう…。 (^_^;)

※19 【お勧めコーナー】
手作り石けん入門
アン・ブラムソン著
地球を汚さない
100の洗い方と
自家製石けん
オリーブ石けん、
マルセイユ石けんを
作る 
前田京子
ペイントソープ お風呂の壁や
体などに、ペンで描くように
すいすいお絵描き
できる液体色つき
石けんです。

参考文献

 石鹸屋さんが書いた石けんの本 三木春逸・三木春雄著 株式会社三水社発行 ISBN4-915607-60-7 C0077
 手作り石けん入門 アン・ブラムソン著 合同出版株式会社発行 ISBN4-7726-0230-5 C2077
 地球を汚さない100の洗い方と自家製石けん 自然食通信編集部 発行者横山豊子 ISBN4-916110-20-X C2077
 手作り石けん 赤松純子著 民衆社発行
 Tao's handmade soap http://www.taosoap.com/


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